私たちが
目指すもの
JAPAN TRAIL構想を提唱するまでの流れ
「ロングトレイル」という言葉が人々の口に上るようになりましたが、日本のロングトレイルのルーツは1200年もの昔にあり、「四国遍路」「お伊勢参り」「熊野詣で」など、世界的にも有名な「歩く文化」があります。また、俳聖・松尾芭蕉の紀行『おくのほそ道』などは、今も〝旅の原点〟として、多くの人々に読まれています。さらに「花見」や「紅葉狩り」「物見遊山」という言葉があるように、昔から日本人は、美しい花や草木を探し求め、愛でることを大切にしてきました。また、神々しい山々は、畏怖であるとともに感謝と崇敬の対象となり、霊山として人々に信仰されてきました。
そのような自然志向の伝統の上に19世紀以降、西欧のアルピニズムの影響を受けて、日本にも近代登山が芽生え、戦後の登山ブームを経て、今日の隆盛を迎えています。さらにここ10年ほどは登山の裾野が広がり、高度な技術や重い装備を必要としない、ほどよいハイキングが多くの人々を魅了しています。山頂に登ることだけが目的ではなく、長く続く山道をぶらぶら歩いたり、山里を散策したり、歩くことそのものを楽しむことが人気になり始めています。
そのような状況のもと、日本におけるロングトレイルの先駆けとされる「信越トレイル」が2008年に開通し、各地で「歩く旅」を楽しむロングトレイルが続々と誕生。国内外から大勢のハイカーが訪れ、高まる健康志向・自然志向を満たすとともに、地域経済の活性化にも大きく寄与するようになりました。全国に広がるこうした流れを受けて2015年、NPO法人・日本ロングトレイル協会が設立されました。
今、アフター・コロナに向けて健康志向・自然志向はさらに高まっています。そこで、ワンランク上の「歩く旅」を楽しんでいただくために、日本列島を縦断する一大プロジェクト「JAPAN TRAIL」(総延長概算1万km)を提唱します。このロングトレイルを、日本のトレイル文化のシンボル的存在に育てるべく、さまざまな活動がすでにスタートしています。10年あるいは50年かけて、多くのハイカーに愛される道にしていきたいと思っております。
JAPAN TRAIL構想の目指すもの
- ・日本のトレイル文化のシンボル的存在として、国土を縦断するロングトレイルを提唱します。
- ・幅広い楽しみ方ができる、新しい「ハイキング(Hiking)」のかたちを提案していきます。
- ・歩くことで日本の魅力を再発見できる楽しみを伝えていきます。
- ・子どもや若者たちに、歩くことによって得られる自然体験や、地域の歴史や文化に触れ、人々と交流する体験の大切さをアピールしていきます。
- ・トレイルが通過する地域の観光活性化と文化の掘り起こしをサポートします。
- ・自然の中における自己責任と安全確保の重要性を啓蒙していきます。
- ・ストレス社会における歩くことの大切さや自然の影響力を伝えていきます。
- ・アフター・コロナにおけるライフスタイルの変容にヒントを提案します。
- ・インバウンドへの情報を提供します。
- ・トレイルを歩くことで自然環境への関心を育み、日本の自然を大切にしようとする環境保全の意識向上につなげていきます。
- ・環境教育の実践の場として、トレイルの活用を提案していきます。
JAPAN TRAILのルート設定で留意したこと
- ・可能な限り四季を通じて安全に歩けるルートを選択します。ただし、一部には積雪によって一定期間、通行不能になるルートもあります。
- ・基本的には、既設の登山道やハイキング道、自然歩道、散策路などを利用します。
- ・日本ロングトレイル協会加盟トレイルなど、既設のトレイルを有効に利用します。
- ・環境省所管の長距離自然歩道や自治体運営の自然歩道、歴史や文化のある古道・旧街道などを利用します。
- ・舗装されている国道や県道などは、極力通らないようにします。
- ・国際基準にかなうよう、セクションごとにトレイルのグレードを設定していきます。
*欧米では、アルピニストが活動する「岩・雪・氷」のフィールド以下の歩く行為は、全て「ハイキング(Hiking)」と捉えています。
現在発表したものは、基本構想としての第1次ルート案です。今後、地元の意見なども取り入れながらブロックごとにルートを精査し、ブラッシュアップしていきます。なお、日本ロングトレイル協会の加盟トレイルで、第1次案ルートに入らないトレイル(ダイヤモンドトレール、南房総ロングトレイル、茨城県北ロングトレイル、栗駒山麓ジオトレイルなどと、一部ルート)を、「JAPAN TRAIL PLUS」として増設していきます。